今日は、久しぶりに映画へ。
「映画館に行って」映画を見てきました。

「映画館で」と、わざわざ言いたくなるほど、
小屋の大小はあっても「2時間」スクリーンと音に集中する幸せ。

妻がいなくなって4か月(2025年1月3日逝去)。
その間は映画館に足を運ばなかったので、
新宿ピカデリーの「侍タイムスリッパー」以来、
なんと半年ぶりの鑑賞です(その時は一人で見たなー)。

しかも、きょうの演目はそろそろ上演がおしまいになるそうで、
午後や夕方の回がなく、朝9時45分のスタート。
朝は弱い私なのにねー。

その映画「レイブンズ:Ravens」。
新宿東口を出てすぐの、新宿武蔵野館にて。

内容は、新宿の歌舞伎町を中心とした
(その他、北海道、東京近郊と思われる団地、ニューヨーク)
男性写真家 深瀬 昌久(ふかせ まさひさ)の物語で、
深瀬を演じる主演俳優は浅野 忠信(あさの ただのぶ)。

舞台は主に、1950年代、60年代、70年代の日本。
ただし、日本映画ではなくて、
監督はイギリス人のマーク・ビルによる海外映画です。

昭和歌謡曲も流れますが、ロックバンドの
ヴェルヴェットアンダーグラウンドの曲が挿入され、
エンドタイトルはザ・キュアーによるもの。

昭和32年=1957年3月生まれの私にとって、
主人公の実年齢は23歳年上ですけれど、
映画に映し出される昭和の風景を知るものとして、
そして、1980年に広告業界に入り、隅っこのほうで
様々なカメラマンさんとの付き合いもある私としては、
心に染みるものがありました。

そして、これがどうしても避けられないのが、
主人公のパートナーとなる女性の名前。

俳優は龍内 公美(たきうち くみ)さんによる演技ですが、
映画での名前はYoko(洋子)。
漢字は違うけれど、亡くなった私の妻 蓉子
(お花の芙蓉のヨウコ)と同じ名前。

そして主人公の男性写真家の死因も、
頭を打ったことによる「急性硬膜外血腫」で私の妻と同じ。
色々と重ねてしまいます。

映画の構成は、史実・ドキュメンタリーに
演出や創作を混ぜた構成のようで、
60年代と70年代、そして80年代まで引きずっていた
「昭和の日本」と「歌舞伎町」を舞台に、
静かに、でも全体が暗ーく進む物語です。

カラーなのにモノクロームの印象。
一方、ラブストーリー映画とも言えるかな。

タイトルの「レイブンズ:Ravens/鴉:カラス」とは、
「ワタリガラス」や「オオガラス」と呼ばれる大型の種類だそうで、
実際のカメラマンによって写真集にもなっています。
主人公の「カラスは俺だ」と言う台詞が象徴的。

やたら飲む酒と、道路でもバーのカウンターでもベッドでも
吸い続けるタバコもすごいなー。

… これ以上は語りませんね。
ストーリーも映画評論的なことも(私には不得手だし)。

私は、若い頃から新宿にはまぁまぁ出かけていました。
西武新宿線に住まいと附属高校があり、
大学も新宿区高田馬場の早稲田大学(商学部)だったので。

ただ、当時は勢いのあった広告業界にいた割には、
「新宿歌舞伎町、さらにはゴールデン街」は、あまり知らないのです。

当然身近に、「歌舞伎町でぐだぐだ」みたいな人は、
先輩でも同年代でもたくさん知っていたものの、
私自身は「歌舞伎町のほんの入口付近にあったジャズスナック」が、
少しばかり馴染みだったことを除いては、
歌舞伎町には深入りしなかった。
できなかったし、入る気がしない別世界と思っていた節はある。

伏魔殿にしてラビリンス。
そして、きょうの主人公のような、芸術との葛藤も
狂気とも無縁に、私は平々凡々、地味に生きてきました。

映画館を出て、大塚家具の販売ショールーム
(YAMADA電機とのコラボ店)の前にある
イタリアンカフェに入り、昼の12時でしたがビール飲んで。

家に帰ってきてから本棚に目をやると、
写真家 荒木 経惟(あらき のぶよし)さんが
奥様の遺影を掲げたポートレイトが目につきました。

その奥様の名前も、漢字は違うけれどYoko陽子さん。

3人のヨウコさんに思いを馳せた独り身68歳のおっさんは、
映画1回1,300円で見られる「シニア割」にて
また映画館へまいります。